« チラシまき | メイン | ドアのこと »

「音」のもんだい

分譲マンションに限らず、およそ住まいの「音」の問題は、大小を問わず当事者にとっては重要な問題となることが多いようです。例えば、上の階に住む人の物音をどうするかは「クレーム産業」とまでいわれてきた住宅供給業界にとっては大きな課題でした。少し古い話ですがかつては団地のピアノの音をめぐって殺人事件まで起きたことがありました。いや、いまでもお住まいの多くの人々が不満に思い、住宅を供給する側は、その解決に頭を悩ませているのが実情です。
 しかし、住宅業界の技術の進展は目を見張るものがあり、こと分譲マンションについては、いろいろな工夫が凝らされた結果、住宅自体の品質も向上し、問題もずいぶん解決されてきました。具体的に言えば床と天井をつくるスラブ(各階を分けるコンクリートの一枚板、とでもいう部位)が、一昔前に比べてその厚さが増している、とういことが一番にあげられるでしょう。従来の15センチくらいのものから18から20センチくらいになっており、また、床も2重床となっています。、サッシュもペアガラスの利用も増え、ドアも堅牢になって物音を通しにくくなっています。今、床は一次流行したカーペット敷き詰め方式から変わり、フローリングという板床を貼る方法が、全盛です。ちょっと前なら音が響き、階下からクレームが来る仕様ですが、音は響きにくくなりました。木造一戸建てなどは、大手メーカー品でもまだ響くものもあるようですが、分譲マンションはずいぶんよくなりました。大きな道路のそばでも、サッシュを閉めれば外の車の通る音も大分軽減されます。
 しかし、反対に中で起こる音が聞こえない、また外の音もまったく聞こえないと言うのも問題がある、という声もあります。二階に引きこもりの自分の息子の行状が分らなくなったり、部屋で事件があっても近所に叫び声も聞こえない、いわば密室化が進んでいると言う意見です。
 音については個人差があり、敏感な人には耐えられないものがあるようです。夫のいびきが離婚の原因、という笑えない話もあります。家族間でこんな様子ですから、他人では、電車中で、かすかに聞こえるヘッドホンステレオの音漏れでも癪に障るように、隣家の可愛い子犬の鳴き声も、時としてトラブルの種となります。
 人が暮らす限り音は発生します。元気な子供がいれば騒々しく、老人の家は静かのようでも、テレビの音は大きくなります。ケンカがあればうるさく、仲がよければ笑い声も聞こえるでしょう。しつけの厳しいうちは、親の声も高くなります。乱暴な人は家のドアをバタンと大きな音でしめますし、椅子を引きずる音にも無神経です。独身や共稼ぎの人は深夜に洗濯機を回すことがありがちです。楽器を練習したい人もいます。便利な場所は、終日車や電車の音がするでしょう。
 都会で暮らす人は好むと好まざるとにかかわらず、密集して住まざるを得ません。団地もマンションも一緒です。そこで発生する音を消し去ることはできません。家族が、にこやかに話しをすることが、隣の騒音だとしてもそれをやめろとはいえません。しかし、そうした音は、外からだけ聞こえてくるのではなく、自分も発生している原因者である、という自覚は必要な気がします。騒ぎまわる自分の子供に、元気でいいねと思いつつ、「静かにしなさい。人の迷惑も考えなさい」と叱ることも大事でしょう。少し自分の行為が、どのように効果を及ぼすのかに思いやれば多くの騒音は、今より軽くなるようにも思えます。貧しい時代の安普請の長屋やアパート、襖や障子のだけの部屋が、隣の音は聞こえても、気配を察し、良いコミュニケーションがあったという時代のこともふと考えてしまいます。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://202.164.239.23/cmt/mt-tb.cgi/16