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靴を脱ぐから

 日本人は、家に上がるとき靴を脱ぐ習慣が普通です。そのため、どこの家にも玄関にあがり框(かまち)というものがあります。そこは、靴をぬいで、床にあがる上がり端(はな)のことで、土足とスリッパの分かれ目?の場所です。木造一戸建て住宅などはここに堅木の銘木などを使い、家に上がるときに最初に目に付くところだからでしょうか、大事にします。マンションでも最近は大理石(人造?)などを使っています。敷居は踏んではいけないことは知っている人も、框もそうだということを知っている人は少ないのではないかしらん?
 それはともかく、ここ(上がり框)にはどうしても段差ができます。バリアフリーの時代にこの段差をどの位の高さにするかは、結構悩ましいことです。マンションの場合床下に施す防音材や配管などによって床の高さが決まりますから、この高さによって段差の寸法は変わります。思い切って段差を無くしてホテルのように、と言う物件もありますが、日本人の靴を脱ぐ習慣を変えない限りこの段差は無くなりそうもありません。車椅子で出入りすることができるようにするためには、段差解消機という小さなスロープを用意する時がありますが、これも段差の高いところでは玄関扉までの距離がなければ使えません。
 ところで、土足、土足といいますが今の都会では土の見えるところなど少なく、土のついた靴底などは珍しいくらいでしょう。昔は、会社の事務所でもスリッパに履き替えるところもあり、病院は今でも靴を脱ぐところが多いようですが、最近は土足のままで入れるホテルのような病院も増えてきています。こうなるとひょっとして日本人も家に上がるときに土足のままになるのかも、と考えてしまいます。いや、しかし、それでも清潔好きな日本人の大半は、家に入るときの靴を脱ぐ習慣はなかなか変えないような気がします。それは、きれい、汚いということだけでなく、日本人の深い文化にも係ってくることのように思うからです。
 首都圏のマンションの場合は、外廊下方式(各戸に行くときの通路が外側になっています。多くのマンションがこの方式)が、この方式ですと雨が降った時に廊下に吹き込むので、雨じまいのために廊下とドアの間、玄関フロアと上がり框の間に段差が必要になります。従って、内廊下方式(ホテルのように)にすればこの問題は解決しますが、各戸の間取りによって、居室の採光や通風、消防法などの法律の規制もあり簡単に全て解決とはいかないのが現状です。
 いろいろ書いてきましたが、外国のように土足で家に入る習慣は、都市の環境が変わっても日本人にはなかなか変えることが出来ないもののようです。既に突入している高齢社会では在宅介護、在宅医療が必須の課題ですが、バリアフリーにしてもユニバーサルデザインであるにしてもこの「段差」問題は日本人の住まいを考える上で象徴的なテーマであるように思えます。つい、我が家の上がり框をじっと見つめてしまいます。

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